明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

「なんで、あのハズレ者の玲子なんかに、藤堂様との縁談が来るのよ!」

 将吾が帰った後の榊原家で、舞香はヒステリックに叫んだ。
 実は隣の部屋に忍び込み、将吾と両親の会話に聞き耳を立てていたのだ。
 舞香は、改めて見た藤堂将吾の姿に衝撃を受けていた。
 舞踏会会場で見た燕尾服も素敵だったが、凛とした軍服姿は、精悍で美しく、まるで絵から抜け出たような理想の男性。
 噂で聞いていたより何倍も素敵な将吾に、舞香は心を奪われてしまったのだった。

「占いなんて、でたらめよ! 玲子なんかより、絶対に私の方が綺麗なのに……許せない!玲子の縁談なんて邪魔してやるわ!」

 と、その時、スパーンと襖が開いた。
 
 そこには、怒りで顔をを赤くした榊原隆之が仁王立ちし、舞香を見下ろしていた。
 彼にとって重要なのは、玲子か舞香かではなく、自身の地位や利益であった。
 藤堂と縁戚関係を結べることこそが、大切なことなのだ。

「舞香、いい加減にしろ! 相手は藤堂だぞ。下手な事をして、破談になったらどうするんだ。決まったことに口を挟むな!」

 隆之が声を荒げると、舞香は感情を抑えきれずに言い返した。

「いやよ! 玲子は松林屋へ後妻に行くはずだったじゃない。それがどうしてっ!」

「松林屋だと!? ……何を言っている!」

 しまった!とばかりに舞香はハッとし、視線を泳がせた。