明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

  将吾はその底の浅さを見抜き、冷たい眼差しを向けた。

「いえ、謝罪など無用です。私が本日伺ったのは、お願いがあってのことです」

 思いがけない展開に、隆之は顔を上げた。

「……お願い、でございますか?」

「はい。お噂では、玲子殿に縁談があると聞いております。年頃のご令嬢ですから、当然のことかと存じますが、その縁談、すべて白紙に戻していただきたい」

 その一言に、隆之は目を丸くした。

「白紙……ですと? もしかして、無礼の詫びに……娘を出家させよ、と言うお話で?」

 あまりに的外れな反応に、将吾の口元がわずかに緩む。

「いえ、そうではありません。私は、玲子殿を藤堂の家で、しばらくお預かりしたいと申し出ているのです」

「……玲子を、預かる?」
と隆之は小首を傾げた。

「はい。花嫁修業のためと、お受け取りいただければ」

 将吾の落ち着いた口調とは裏腹に、隆之と百合絵は仰天したように顔を見合わせた。

「は、花嫁修業……? 藤堂様に、あの玲子が……!?」

 思わず身を乗り出し、信じられないといった様子で百合絵が口を開いた。