二十歳にも満たない小娘が、霊体となった自分に話しかけて来るとは、侍の幽霊にとって、思いも寄らぬ出来事だ。
人間としての肉体の死を迎え、魂だけの霊体になってから、長い時間が過ぎた。
霊体というのは、誰にも気付かれず、そこに居るだけの存在になったのだと寂しく思っていた。稀に霊体の存在を感じた者が居たとしても、一応に恐れ、排除しようとして来るのだ。
それなのに、話をしましょうとは、呑気にもほどがある。
華奢な体からは想像もつかない肝の太さに、侍の幽霊を纏う警戒が溶けていく。
『玲子殿とお呼びしてもよろしいかな』
「はい、どうぞお好きにお呼びくださいませ。貴方様のお名前を伺っても?」
『拙者は、藤堂一将と申す。彼処に在る、藤堂将吾と尚文の祖父に当たる縁者でござる。孫の様子を眺めているだけのただの爺だ」
思っていたとおり、藤堂家の血縁者だった。
爺と藤堂一将は言うが、精悍な姿はどう見ても三十過ぎにしか見えない。
亡くなった時の姿なのか、無意識にその姿を保っているのか、不思議に思い玲子は小首をかしげた。
しかし、どちらにしても藤堂の血縁と言うだけあって、目元の辺りがよく似ている。


