明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

 玲子が頷くと、少女の幽霊は腕を組み、どこか得意げに言った。

『わたしね、吉壱のお姉さんなんだよ。でもね、今じゃ吉壱がおじいさんになってるから、なんだかフクザツなの。しかも、最近は偉そうにしててムカつくし、吉壱は、すっかりイヤな大人になったもんだ』

 そう言って、少女はウンウンとひとりで頷いていた。 

「そうなんですね。わたくしは、お仕事を頂いている立場なので……大旦那様は偉い方という印象です」

『えっ? お仕事? ……あれ? じゃあ、お姉さんって縁談の人じゃないの?』

「え?」

『少し前に、感じの悪いおばさんが来てたの。その人が、吉壱に娘を後妻にどうかって話してたの。だから、てっきりお姉さんがその後妻さんかと思ってたんだけど』

 その言葉に、玲子の背筋がゾクリと冷えた。
 松林吉壱……祖父と呼んでもおかしくないほどの年齢の男の人と、自分の知らぬところで縁談が……?
 悪寒がぞわりと背を這い、玲子は両腕を交差させ、自分の肩を抱きしめるように縮こまった。 

『あ、来た』

 そうつぶやくと、少女の幽霊はふっと姿を消す。
 間を置かずして、襖が静かに開いた。
 恰幅の良い体を揺らしながら、松林吉壱が部屋へと入ってきた。