祝詞が静かに響く。
巫女が舞を始め、障子越しの春光が、玲子と将吾の影をやわらかく重ねていく。
この場に集った多くの者たちが、藤堂の新しい時代の幕開けを見つめる中、将吾はただ、目の前の玲子のことだけを見ていた。
そして、その片隅に。
誰の目にも映らぬ場所に、一将の姿があるような気がした。
厳しくも深いまなざしで、今の自分たちを見守っている。
あの人が歩んできた藤堂の道を、今、ようやく自分が引き継ぐのだと、静かに覚悟が胸に根を下ろしていく。
風がそっと吹いた。玲子の頬を優しく撫で、その髪を揺らす。
それはまるで、祝詞の代わりに贈られた、父の祝福のようだった。
将吾は玲子の手を握ったまま、ただ一言、心の中で囁いた。
(お祖父様……ありがとうございます)
そして、ふたりはその手を離さずに、未来へと向かって歩き出した。


