明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

 玲子の瞳には、確かな意志が宿っていた。
 誰かに支えられて立つのではなく、自らの足で未来へと歩く者の眼差し。
 痛みも、孤独も、すべてを通り抜けてきた人間だけが持つ、凛とした光だった。
 将吾はそれを誇りに思った。
(お祖父様が見たら、何と言ってくれただろうか)

 もしも、祖父が生きていたら、きっと同じように誇らしげに、そして優しく見守っていただろう。
 今だけは、その姿が目に浮かぶ気がした。

 将吾は壇の上で、白無垢の彼女を迎えながら、静かに手を差し伸べた。

「ようこそ、我が妻殿」

 その声は、心の奥底から滲み出るようだった。
 玲子は頬をわずかに染めながらも、しっかりと将吾の手を取る。

「……こちらこそ。これから、末永くおそばに」

 その一言が、心に深く染み渡る。
 この瞬間をどれほど待ち望んだか。
 ただ守るだけの存在ではない、共に生き、支え合う“伴侶”として、彼女が隣に立ってくれることの意味。その重さを噛み締めながら、将吾はその手を、そっと、けれどしっかりと握り返す。