明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~


 一将はクククッと笑い、玲子の肩に目をやった。

『だが、安心した。お前はもう、ひとりではない。将吾も尚文も、お前を大切に思っておる。……拙者が見込んだとおりじゃ』

 玲子の瞳が、うっすらと潤む。

「……でも、一将様にも、ずっといてほしいです」

『あいにくだが、拙者の役目はもうすぐ終わる。……じゃが、安心せい。人が人を想う心に、終わりはない。拙者の想いも、いつまでもお前と共にある』

 玲子は、手をぎゅっと重ねたまま、そっと目を閉じた。

 その瞬間。

 ふと、部屋の障子が風もないのにわずかに揺れ、光がふわりと舞った。

「玲子君、今……」

 尚文が、微かに不思議そうに声を漏らす。
 将吾もまた、何かを感じ取ったように静かに目を細めた。

 だが、玲子だけには見えていた。
 仏壇の前で、微笑みながら深く一礼する一将の姿が。

『拙者は、いつもそばにおる。心に響くなら、それで充分じゃ』

 そう言い残し、彼の姿は静かに光へと溶けていった。

 玲子はそっと目を開け、涙のにじんだ目で仏前に深く頭を下げた。

「……一将様。どうか、見守っていてください」