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馬車は、柔らかな夕暮れの中をゆっくりと進んでいた。
車窓に映る空は、淡い朱に染まり、まるで祝福するように藤堂の道を照らしていた。
玲子は、小さく息をつきながら窓の外を見つめていた。
頬にはまだ涙の痕が残っている。けれど、心の奥にあるものは、もう悲しみではなかった。
静かで、温かなもの。
その時、隣に座る将吾がそっと白い布を差し出した。
「……涙、乾いてないよ」
玲子は驚いて顔を向ける。将吾の目は、いつもと変わらず穏やかだった。
その優しさに、思わず頬が緩む。
「……気づいてたんですね」
「玲子さんが泣いてると、すぐわかる。不思議なくらい」
玲子は、小さく笑った。
少し前の自分を考えると、幸せな涙を流す日が来るなんて想像もつかなかった。
「そんなに、わかりやすいですか?」
「ああ、わかりやすいな。でも……そういうところも、好きだ」


