明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

 三人が席に着き、しばしの沈黙のあと、将吾が真っ直ぐに隆之を見据えた。

「私は、藤堂家次期当主として……榊原玲子様を、妻として迎えたいと考えております。これまでの経緯も承知の上で、貴家のご了解を得たく、本日お伺いしました」

 隆之の視線が玲子へと移る。娘としてではなく、初めて一人の大人として見つめられている気がして、玲子は無言のまま、それを正面から受け止めた。

 しばらくの沈黙ののち、隆之はゆっくりと口を開いた。

「玲子……おまえにしてきた仕打ちは、親として恥ずべきことだ。
 だが、それでも……こうして、おまえが誰かに大切にされている姿を見られたことは、父として、この上ない救いだ」

 隆之の目が、まっすぐ将吾を射るように見据える。

「藤堂将吾殿……君が、どんな想いで玲子に寄り添おうとしているか、それはもう聞かせてもらった。……ただひとつ、確認しておきたい」

「はい」

「玲子は……不器用な子だ。だが、強い心を持っている。どうか、あの子が過去を乗り越えて、笑えるようにしてやってほしい。そして、もしも……その笑顔が曇ることがあれば、その時は……親である私が、あの子のもとへ向かう。たとえ藤堂家が相手であろうと、構わぬ」

 ぴたりと空気が張り詰めるが、隆之はふっと口元を緩めた。

「……そうならぬことを、願っているがな。どうか、頼んだ」