◇
柔らかな日差しの午後。榊原家の門前に、控えめな馬車が止まった。
その扉が静かに開き、まず姿を現したのは藤堂将吾だった。黒紋付きの羽織に袴を纏い、背筋は真っ直ぐに伸びている。
その後ろから、玲子がそっと降り立つ。今日は控えめな淡紫の小紋に、白椿の刺繍があしらわれた羽織を重ねている。少し緊張した面持ちだが、その眼差しには確かな意志が宿っていた。
「……行こう」
将吾が静かに言い、玲子が頷く。
案内されたのは、榊原家の客間。すでに隆之が待っていた。政務を終えた直後らしく、洋装から和装に着替えたばかりの様子だ。
将吾は丁寧に頭を下げた。
「榊原隆之様。突然のご無礼、お許しください。本日は、正式にご挨拶を申し上げたく……参上いたしました」
玲子も続けて、深々と頭を下げる。
「……お父様、玲子でございます。……失礼いたします」
隆之は一瞬だけ目を伏せると、椅子から腰を上げ、静かに頷いた。
「……座りなさい」
柔らかな日差しの午後。榊原家の門前に、控えめな馬車が止まった。
その扉が静かに開き、まず姿を現したのは藤堂将吾だった。黒紋付きの羽織に袴を纏い、背筋は真っ直ぐに伸びている。
その後ろから、玲子がそっと降り立つ。今日は控えめな淡紫の小紋に、白椿の刺繍があしらわれた羽織を重ねている。少し緊張した面持ちだが、その眼差しには確かな意志が宿っていた。
「……行こう」
将吾が静かに言い、玲子が頷く。
案内されたのは、榊原家の客間。すでに隆之が待っていた。政務を終えた直後らしく、洋装から和装に着替えたばかりの様子だ。
将吾は丁寧に頭を下げた。
「榊原隆之様。突然のご無礼、お許しください。本日は、正式にご挨拶を申し上げたく……参上いたしました」
玲子も続けて、深々と頭を下げる。
「……お父様、玲子でございます。……失礼いたします」
隆之は一瞬だけ目を伏せると、椅子から腰を上げ、静かに頷いた。
「……座りなさい」


