◇
応接の間。床の間には藤堂家の家紋をあしらった掛け軸がかけられ、香がほのかに漂っていた。
将輝は奥の座にゆっくりと腰を下ろす。その動作ひとつにも、藤堂家の“重み”があった。
玲子と将吾は向かいの座に並んで正座し、静かに頭を下げた。
「……まずは、この度の不始末、家長として深くお詫び申し上げる」
将輝の口からその言葉が出た瞬間、将吾は目を見開いた。
「将吾の叔父にあたる輝明の行動が、藤堂の名を穢した。その責任は、この家の人間として私が引き受ける」
低く重い声が部屋に落ちる。だが将輝の眼差しは、すでに玲子へと向けられていた。
「……君に問う。なぜ、藤堂家に尽くすような真似をするのだ?」
玲子は一瞬だけ目を伏せたが、すぐに顔を上げた。その視線はまっすぐに将輝のものを受け止めていた。
「尽くすためではございません。ただ、わたくしにとって……この家で出会った人々は、大切にしたい思える方々ばかりでした」
将輝の眉がかすかに動いた。
「わたくしは妾腹の娘であり、家格も遠く及ばない身であることは承知しております。それでも……わたくしは、生まれて初めて、人の優しさに触れ、愛されるということを知りました」
その言葉には、取り繕いのない誠実さが宿っていた。
応接の間。床の間には藤堂家の家紋をあしらった掛け軸がかけられ、香がほのかに漂っていた。
将輝は奥の座にゆっくりと腰を下ろす。その動作ひとつにも、藤堂家の“重み”があった。
玲子と将吾は向かいの座に並んで正座し、静かに頭を下げた。
「……まずは、この度の不始末、家長として深くお詫び申し上げる」
将輝の口からその言葉が出た瞬間、将吾は目を見開いた。
「将吾の叔父にあたる輝明の行動が、藤堂の名を穢した。その責任は、この家の人間として私が引き受ける」
低く重い声が部屋に落ちる。だが将輝の眼差しは、すでに玲子へと向けられていた。
「……君に問う。なぜ、藤堂家に尽くすような真似をするのだ?」
玲子は一瞬だけ目を伏せたが、すぐに顔を上げた。その視線はまっすぐに将輝のものを受け止めていた。
「尽くすためではございません。ただ、わたくしにとって……この家で出会った人々は、大切にしたい思える方々ばかりでした」
将輝の眉がかすかに動いた。
「わたくしは妾腹の娘であり、家格も遠く及ばない身であることは承知しております。それでも……わたくしは、生まれて初めて、人の優しさに触れ、愛されるということを知りました」
その言葉には、取り繕いのない誠実さが宿っていた。


