玲子は小さく頷く。もちろん将吾にも尚文にも、その姿は見えていない。
けれど、不思議と温かな風が室内を撫で、まるで物語の結びを告げるかのようだった。
将吾が静かに口を開いた。
「これから、藤堂家は変わっていく。そのために……君にも、傍にいてほしい」
玲子は一瞬驚きに目を見開いたが、やがて自らの意志で選び取るように微笑む。
「……はい。わたくしも、共に歩ませていただきます」
その言葉に、尚文はふっと息を吐いた。微笑とも溜息ともつかぬ表情は静かだが、どこか複雑さを帯びていた。
「……やっぱり君は変わらないな。真っ直ぐで、不器用で……それでいて、誰よりも思いやりがある」
尚文は窓の外へ視線を向ける。若葉が風に揺れ、かすかなざわめきが部屋に届いた。
「傍にいてほしい、か……まさか将吾が、そんな言葉を口にするようになるとはな」
将吾が言い返そうとしたが、尚文はそれを制するように、柔らかく笑って続けた。
「安心したよ。……玲子君が将吾の傍にいるなら、きっと藤堂の未来は大丈夫だ」
そう言って立ち上がり、将吾の肩を軽く叩く。
「もちろん、俺も協力は惜しまない。……これから藤堂家がどう変わっていくのか、楽しみにしている」
その瞳には、少年のようなきらめきと、大人の覚悟が同時に宿っていた。


