明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

 分家の年配者たちは紙面に目を走らせ、次々に顔色を失っていく。

 将吾はさらに声を重ねた。

「当主の座欲しさに殺害を試みたが、思惑通りにいかなかったようだな!」

「くっ」

「遺言状により、当主の座は長兄である将輝に渡る事となった。軍人の将輝には敵わないとなると、次の機会を虎視眈々と窺っていた」

 広間に居る一同は息を呑んだ。

「そして、孫に男子が生まれたことで、野望に火がついたのだろう。舞踏会で俺を殺し、尚文を犯人に仕立て、時期当主候補の二人を同時に排除しようとした。だが、その目論見が、玲子殿の機転で砕けた。結果、当主の座を奪い損ねて、さぞや業腹だったことだろうな」

 追い詰める言葉が次々と突きつけられ、輝明の顔に初めて苦渋の色が差した。だが、よほど悔しかったのか、奥歯を噛みしめると将吾を睨みつけた。

 将吾は一歩踏み出し、冷ややかな声で言い放つ。

「……そして、叔父上は最後の足掻きに、玲子殿へならず者を差し向けたのだな」

 広間がざわめきに揺れる。

「藤堂の名を騙り、弱き娘を狙わせるとは……卑劣の極み。貴様の所業はもはや弁解の余地もない!」

 その声は雷のように響き渡り、分家衆の誰もが言葉を失った。