ふわりと空気が揺れ、文箱の向こうに、一将の姿が現れた。
「一将様……」
『夜用と記された薬……拙者が医師から聞いていた処方内容と違う。思えば、いつの頃からか、薬を飲んだのに心臓がどきつきと痛み眠れぬ日が増えた』
一将の顔に、どこか遠くを見つめるような影が差す。
『しかも、最期の夜……用意された薬を飲んで、やけに体が熱くなってな……そのあと、眠るように意識が落ちた』
「……まさか、麻黄と合わせて、心臓を刺激するような薬を意図的に飲まされたのでは……?」
『あの夜、たしかに薬を運んだのは、家人ではなく、息子である輝明だった……。拙者はそれを疑いもせずに飲んでしまった』
一将は視線を落とし、ぽつりと続けた。
『その後、拙者の死に不審を抱く者などおらず、結局は調べず仕舞いで静かに処理されたのだ。だが、いままで……ずっと腑に落ちなかった』
玲子は、手帳を閉じて胸元に抱いた。
「将吾様にお伝えしなければ……!」
『待て、玲子殿』
一将は手をかざし、玲子を制する。
『まだ証拠としては薄い。感情で動けば、真実はかえって遠のく。……だが、そなたなら真実へと近づけると信じている』
玲子は深く息を吸い込む。
「わたし……必ず、見つけます。誰が何のために、一将様の命を奪ったのか」
『その覚悟、しかと見届けようぞ』
一将の声は、優しくも凛としていた。
そして、玲子の胸の奥に、小さな疑念が静かに芽吹いていた。
(将吾様の叔父……輝明様。やはり、あの人は……)
「一将様……」
『夜用と記された薬……拙者が医師から聞いていた処方内容と違う。思えば、いつの頃からか、薬を飲んだのに心臓がどきつきと痛み眠れぬ日が増えた』
一将の顔に、どこか遠くを見つめるような影が差す。
『しかも、最期の夜……用意された薬を飲んで、やけに体が熱くなってな……そのあと、眠るように意識が落ちた』
「……まさか、麻黄と合わせて、心臓を刺激するような薬を意図的に飲まされたのでは……?」
『あの夜、たしかに薬を運んだのは、家人ではなく、息子である輝明だった……。拙者はそれを疑いもせずに飲んでしまった』
一将は視線を落とし、ぽつりと続けた。
『その後、拙者の死に不審を抱く者などおらず、結局は調べず仕舞いで静かに処理されたのだ。だが、いままで……ずっと腑に落ちなかった』
玲子は、手帳を閉じて胸元に抱いた。
「将吾様にお伝えしなければ……!」
『待て、玲子殿』
一将は手をかざし、玲子を制する。
『まだ証拠としては薄い。感情で動けば、真実はかえって遠のく。……だが、そなたなら真実へと近づけると信じている』
玲子は深く息を吸い込む。
「わたし……必ず、見つけます。誰が何のために、一将様の命を奪ったのか」
『その覚悟、しかと見届けようぞ』
一将の声は、優しくも凛としていた。
そして、玲子の胸の奥に、小さな疑念が静かに芽吹いていた。
(将吾様の叔父……輝明様。やはり、あの人は……)


