輝明の言葉が胸の奥でこだまする。
たしかに、家を継ぐ身である以上、安易な感情で生涯の伴侶を選ぶわけにはいかない。
だが……。
「それでも、俺は……」
将吾は湯呑みをそっと机に戻した。
玲子を選ぶことは、家を捨てることではない。
彼女と共に歩むことで、藤堂を未来へ導く。
その覚悟を持つのだ。
ふと窓の外に目を向けると、庭の山茶花が風に揺れていた。
玲子が水をやり、愛おしそうに手を伸ばしていた花々。
ああ、そうだ。
玲子はただ、守られるだけの存在ではない。
共に苦難を乗り越え、この家を守り、支え、未来を育ててくれるだろう。
「……一緒に、歩んでいきたい」
それが、将吾の選んだ答えだった。
机に肘をつき、額を押さえていた手をゆっくりと降ろす。
将吾は小さく笑みを浮かべた。
もう迷いはなかった。
玲子と共に、生きていく。
それが、藤堂将吾の未来だ。
沈黙の中、窓から差し込む西日が、畳の縁をやわらかく照らしている。


