「一将様……そんなこと、ありません。むしろ……あの羽織紐を選んでいた時間が、わたくしにとって、心を救われた大切なひとときでした」
玲子が優しく語ると、一将はぐっと言葉を詰まらせ、眉を下げた。
『玲子殿は本当に……健気よのぉ……』
そして将吾の方をちらりと見ると、真顔に戻る。
『将吾よ。よくぞ、玲子殿を取り戻してくれた。お主を孫に持って、誇らしいわい』
もちろん、その声は将吾には届かない。
だが、どこか空を見上げるように、将吾がふっと眉を上げた。
「……何か、言ったか?」
玲子は、微笑んだ。
「いえ、一将様が”良くやった”と褒めていらっしゃいます」
それを見ていた尚文が、からかうように肩をすくめる。
「本当に不思議だな。僕らにもお祖父様が視えればいいのに……。でも、よかった。本当に……無事でいてくれて」
座敷には、少し遅れて運ばれてきた湯気立つお粥の香りが満ちていた。
温かな空気に包まれながら、玲子はようやく、心の底から安らぎに身を預けることができた。
そして、夜の帳がゆっくりと降りる中、藤堂の屋敷には、ひとときの平穏が訪れていた。
玲子が優しく語ると、一将はぐっと言葉を詰まらせ、眉を下げた。
『玲子殿は本当に……健気よのぉ……』
そして将吾の方をちらりと見ると、真顔に戻る。
『将吾よ。よくぞ、玲子殿を取り戻してくれた。お主を孫に持って、誇らしいわい』
もちろん、その声は将吾には届かない。
だが、どこか空を見上げるように、将吾がふっと眉を上げた。
「……何か、言ったか?」
玲子は、微笑んだ。
「いえ、一将様が”良くやった”と褒めていらっしゃいます」
それを見ていた尚文が、からかうように肩をすくめる。
「本当に不思議だな。僕らにもお祖父様が視えればいいのに……。でも、よかった。本当に……無事でいてくれて」
座敷には、少し遅れて運ばれてきた湯気立つお粥の香りが満ちていた。
温かな空気に包まれながら、玲子はようやく、心の底から安らぎに身を預けることができた。
そして、夜の帳がゆっくりと降りる中、藤堂の屋敷には、ひとときの平穏が訪れていた。


