「どうして? あんたがそこにいるからよ!」
「えっ⁉」
「私の幸せを奪った千賀子の娘だからよ!あの女は、私より美しく、私より愛されて。憎くてたまらないのよ!」
その声はもはや怒号に近く、顔に浮かぶ憎悪は鬼のようだった。
百合絵のまわりには、《《悪しきモノ》》の黒い影が立ち込める。
百合絵は懐から巾着を取り出し、情夫の手に乱暴に押し付けた。
「せいぜい、この男達に汚され、惨めに死ぬといいわ」
吐き捨てるように言い残すと、ひとつの未練も見せずに背を向け、足音を響かせて立ち去った。
戸口の隙間から差し込む光が、彼女の去った後の闇をいっそう濃くする。
「あはは、いい仕事だぜ!」
「どうする?誰が一番最初にやる?」
残された男たちが下卑た笑いを漏らし、この後のことを相談し始めた。
そのおぞましい内容に、耳を塞ぎたい玲子だったが、拘束された腕ではそれも叶わない。
やがて、相談を終えた男が、じりじりと玲子へにじり寄る。
「へへ……可愛い顔だな。泣き顔が楽しみだぜ」
「おとなしくしてりゃ、痛い目は見ねえで済むかもな」
玲子は必死に身を捩ったが、縄が食い込み、自由にならない。
「や、やめてください……」
喉の奥から震える声が漏れる。
じりじりと迫る影。荒れた床板が軋むたびに、玲子の心臓は破裂しそうなほど跳ね上がる。
「……助けて……誰か……」
震える声は、掠れてか細い。
けれどその必死の叫びは、夜の空気を切り裂き、確かに外へと届いていった。


