明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

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 小さな包みを手に戻ってきた尚文は、店の入り口を見て首を傾げた。

「……玲子君?」

 店の中を見渡しても、玲子の姿はない。まさか店を出たのかと、慌てて周囲を確認するが、どこにも見当たらなかった。
と、その時。

「尚文!」

 怒気を帯びた声とともに、通りの向こうから将吾が駆け寄ってきた。額には汗がにじみ、軍帽は手に持ったままだ。

「将吾? どうしてここに?」

「それはこちらの台詞だ! 玲子殿はどこに居る!?」

「……玲子君なら、ここで羽織紐を選んでいるはずだったんだ。僕が少し席を外している間に、居なくなってしまったみたいで……」

「ふざけるな! お前が目を離した少しの間に、何かが起きたんだ!」

 将吾の怒声に、尚文は唇を噛んだ。

「……すまない。本当に、すぐ戻るつもりだった。まさか、こんなことになるなんて……」

 二人のただならぬ気配に、小間物屋の奥から、遠慮がちに店員の中年女性が顔を出した。

「あ、あの……お嬢様をお探しですか?」

 二人がハッとして振り向く。

「知っているのか?」

「はい、さっき、別のご婦人がいらっしゃって……”身内です”って。お嬢様はちょっと驚いていた様子でしたけれど……手を引かれて馬車に……」

「相手の女は、どんな女だった!? 歳は? 背格好は?」

「えっと……ええと……四十代くらい、派手な着物で、髪を結い上げてて」

 その特徴を聞いた瞬間、将吾の瞳に閃光のような鋭さが宿る。