冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

 でもみんなも社長のそばにいたら、きっと少しは今までの認識を改めると思う。
 彼は何の理由もなく冷酷な判断を下すわけじゃない。
 両者がもう一歩ずつでも歩み寄ってくれたら、きっと会社の雰囲気は変わるのに――。
 何かいい方法がないかと考えてみるけど、やはり私一人の力ではどうにもならないことだった。

 

 それから数日後、社長と同年代の男性が社長室を訪れた。
 私はこの珍しい来客に度肝を抜かれ、つい凝視してしまう。
 というのも、スーツ以外の服装で社長室へ来る人はほとんどいない。なのに、この来客男性はインディゴのデニムシャツにベージュの太いチノパンを合わせたカジュアルなスタイルでやって来たからだ。
 
「おっ! かーわいい子じゃん!」
 
 そんな挨拶をされたのもはじめてだった。
 私は内心では困惑していたが、他の来客と同じように応対するよう心がける。
 社長は普段よりさらに険しい顔つきでその男性の背中を押し、社長室のドアを素早く閉めた。
 
 コーヒーを運んでいくと、珍客の男性は私の顔を興味津々で見つめてきた。
 
「ねぇねぇ、彼女に俺を紹介してよ」
 
 社長の目が普段より一層鋭くなった気がする。
 だけど、向かい側の男性はまったく気にする様子はない。大きなため息の後、社長の投げやりな声がした。
 
「この男は俺の同い年の幼馴染。小学校から大学まで一緒だった。今は建築士をしているらしい」