冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

 社長は思わず見とれるような容姿を持ち、若くして会社を大きく育てた有能な男性だ。
 実際その仕事ぶりを近くで見ていると、私の心の中にはいつしか彼を深く尊敬する気持ちが宿っていた。
 だけど私は社長室秘書係で、それ以上でもそれ以下でもない。どんなときもそれを忘れてはいけないと思う。
 
 なのに昼休み以降、私は社長のことを変に意識してしまっている。
 そんな自分自身に困惑していたら、私用で外出していた社長が戻ってきた。
 
「コーヒー、入れて」
 
 それだけ言い残して足早に社長室に姿を消す。いつものぶっきらぼうな言い方だ。
 私は手際よくコーヒーを入れて社長室のドアをノックした。
 
「どうぞ」
 
 ドアを開けると、社長は応接用のソファに長い足を投げ出して横になっていた。
 いつもなら私が入室すると座り直すのに、今日は横たわったままだ。
 
 恐縮しながらテーブルの上にコーヒーを置いてソファから離れようとしたとき、不意に声を掛けられた。
 
「後藤さんは兄弟いるの?」