冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

「後藤さん。君のプライベートにいちいち口出しするつもりはないが、相手が古東となると話は別だ」
 
 私は怒られているような気分になってうつむく。やはりオイシイ話だからとよく考えもせずにチケットを受け取ってしまったのが失敗だったのだろうか。
 でも、と私は思い直した。
 
「古東さんがどういう意図で私を誘ってくださったのかはわかりませんが、社長の幼馴染と知っていて簡単にお断りすることは私にはできません」

「君はバカか」
 
 呆れたような声を真正面からぶつけられた。私は社長を無言で睨み返す。
 
「それじゃあ君は、古東がミュージカルの後も強引に付き合えと言ってきたら、のこのこついて行くのか。あの男が()()()()()()()()簡単には断れないんだろう? どうなんだ?」
 
「それは……わかりません」
 
 社長と私はその場で身動きもせず、数秒間睨み合っていた。
 突然視線をフイと外して背中を向けたのは社長のほうだった。社長室のドアが乱暴に閉じられる。
 
 完全に怒らせてしまったようだ。
 私は自分の椅子に腰を下ろすと、ふうと大きく息を吐いた。プライベートに口出しする気はないと言ったくせに、どうして怒られなければならないのかよくわからない。
 
「『バカ』って、ひどい。言い過ぎ」
 
 胸の中に収めておくことができなくて、小さな声で愚痴った。
 チケットをもらっただけのことが、そんなにいけないこと――?
 私にはどうしてもそう思えなかったのだ。
 
 この一件からほぼ一週間、社長は頑として私とは口を利かず、私は仕事上どうしても必要な連絡事項のみを伝えるだけで、お互いピリピリとした雰囲気の中で過ごすことになった。