冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

「お前に言われなくても、彼女の資質は俺が一番理解している」
 
 ドン、と心臓を打ち抜かれたような衝撃を感じ、息が止まる。
 
 古東さんが「はいはい」と茶化すように受け流した。

 そこに電話の音が聞こえてきた。
 私は本来の仕事を思い出し、すぐに礼をして社長室を後にする。電話の応対をしながら、もう少しだけ社長と古東さんの話を聞いていたかったな、と思った。


 
 古東さんの来訪から一週間が経った。
 また特に変化のない日常が繰り返されていて、社長は能面を貼りつけたような顔で私のデスクの前を素通りする。
 それは当然と言えば当然のことだけど、私は何か物足りないような気持ちで社長の背中を見送った。
 
 この日も頭を悩ませるような事件は起こらず、着々と定時が近づいてきていた。
 社長は外出中だったので、仕事をキリのいいところで終わらせ、デスクを片付ける。その最中に一階の受付が来客を伝えてきた。
 
「コトウ様、ですか。漢字は『古い』に『東』でしょうか?」
『そうです』
 
 私の脳裏に社長の陽気な幼馴染の顔が浮かんだ。