冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

光輝(こうき)はホントにつまらない男だな。後藤さんもそう思うだろ?」
 
 同意を求められた私は何と返事をしたらよいのかわからず、中途半端に口を開いたまま固まっていた。
 社長を横目で見ると怒ったような顔でコーヒーを飲んでいる。助け船を出してくれるのではないかとほんの少しだけ期待したが、それどころではなさそうだ。
 
 仕方がない。私は勇気を振り絞って言った。
 
「私が思うに……社長は一般の笑いのレベルでは満足しないのではないでしょうか?」
「えっ?」
 
 思惑通り古東さんが戸惑ったような声を出す。
 社長は私の顔をチラッと見た。余計なことを言うな、という表情だ。
 でも私はそんなプレッシャーには負けない。
 
「おそらく非常に高度な笑いを、常に求めているのだと思います」
 
「……ぶーーーっ!」
 
 古東さんがふき出しながら背もたれにそっくり返った。
 
「『非常に高度な笑い』を『常に求めている』のか! これは後藤さんに一本取られたな」
 
 古東さんの反応に満足していると、反対側から「フッ」と笑い声が聞こえた。
 おそるおそる視線を社長へ移動する。社長は口に手を当て、背を丸めて笑っていた。
 
「コイツを笑わせるとは、後藤さん、やるなぁ。光輝、こんないい子はめったにいないぞ。大事にしろよ」
 
 私の頬は急にピキッと引きつった。
 古東さんは、社員としての私を大事にしろと言ってくれたのだ。他意はないはず。
 でも私の心臓はドキドキとうるさくなっていた。
 一瞬、嫌な沈黙が室内を支配する。

 それを破ったのは、きっぱりとした社長の声だった。