冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

 私がこの席に座るようになって半年が過ぎた。
 真っ白な壁に真紅の絨毯(じゅうたん)。白く塗装されたデスクと赤い椅子。背後に並ぶスチール書庫も白で統一されている。
 このスタイリッシュな空間の奥に我が社の社長室があるのだ。
 そして社長室の手前には秘書係のデスクがあり、ひょんなことから入社二年目の私がここで仕事をすることになった。

 以前この席に座っていた大迫(おおせこ)さんは、美人で聡明なことから誰からも評価が高く、社長秘書のお手本のような人だった。
 口調はどんなときも淀みなく、電話の応対も老練の域に達していた。まだ自分に自信のなかった頃の私は、彼女の喋りを録音して真似しようかと思ったくらいだ。
 
 でも半年前、大迫さんは両親の介護を理由に突然会社を辞めた。若く見えたのにアラフォーだと聞いて驚いたのもこのときだった。
 ただ両親の介護のためという退職理由には、ほとんどの社員が首をかしげた。大迫さんのご両親ならまだ若いだろう、と。
 だから彼女が退職する本当の理由は、社長の逆鱗に触れたため、といううわさが社内に広まった。
 
 それを他人事だと思って聞いていた私に、いきなり異動が言い渡され、あろうことか社長秘書として社長室で勤務することが命じられた。