「ピヨちゃん、大丈夫...?元気ないね...。」




 
 明里は、心配そうに水槽を覗き込んでいる。





ピヨちゃんは、普段なら元気に泳ぎ回っているのに、今日は底の方でじっとしている。






美亜は、金魚の様子を観察しながら、明里を落ち着かせようと試みた。
 






 「大丈夫だよ、明里。ちょっと疲れてるだけかもしれない。病気ってわけじゃないと思うけど...。」





 
 「でも、でも、ピヨちゃんが弱ってるのは、私がちゃんと世話してないからかも...!」
 




 明里は、目に涙を溜め始める。その様子に、美亜は慌ててフォローした。




 
 「そんなことないって!明里がピヨちゃんのこと一番気にかけてるの、私知ってるから。ほら、ご飯もちゃんとあげてるし、水も綺麗にしてるじゃない。」




 
 「う、うん...。」
 





 「それに、ピヨちゃん、もしかしたら何か秘密があるのかもよ?例えば、実は人間だったとか、前世で王様だったとか。」
 





 美亜の冗談に、明里は少しだけ笑顔を取り戻した。
 





 「えー!ピヨちゃんが王様!?じゃあ、私、お世話係だね!」
 





 「そういうことにしておこう。とりあえず、今は静かに様子を見ようね。」
 






 美亜は、明里の手を優しく握った。




金魚の世話をしながら、明里の純粋さに触れるのは、彼女の日常のささやかな楽しみの一つでもあった。