電車の向こう側。【完結】

 彼の音は特別すぎる。
 自分は、特別なんてなりたくない。





 「いってきます!」





 メガネを直し、カバンを肩にかける。
 家を出ると、やわらかな風が頬を撫でた。







 通学路には、いつもの風景が広がっている。
 老夫婦が手をつないで歩いている。






 ジョギングをしているおばさんが「あら、未来ちゃん!おはよう!」と声をかけてくれる。






 自転車に乗った大学生らしき女性が信号で立ち止まり、スマホを見つめている。







 犬を散歩させているおじさんが、元気よく挨拶してくれた。







 そのどれもが、未来にとって“日常の守り神”のようだった。






 変わらない風景。変わらない人たち。
 それが、彼女を安心させてくれる。