朝。
「ん…、…??」
未来が目を覚ますと、いつもの最寄り駅のベンチに座っていた。
辺りを見渡すと、見慣れた景色だった。聞き慣れたアナウンス。
電車の音、人の話し声、鳥の鳴き声——
全部が、懐かしい。
「あれ?ここって……?」
未来は立ち上がり、駅のホームを歩いた。
通学途中の老夫婦、ジョギングするおばさん、
自転車に乗った女子大生、犬の散歩をするおじさん。
——全部、元に戻っている。
けれど、未来の胸の奥は、ぽっかりと穴が空いたように寂しかった。
未来は、聖とのことを忘れてしまっていたのだ。
学校へ行っても、茉希はいつも通りだった。
喧嘩の記憶も、涙の夜も、なかったことになっていた。
「未来、今日放課後寄り道しない?」
「……うん。いいよ!」
未来は微笑んだ。
でも、心のどこかで誰かを探していた。



