廊下を歩く。
窓ガラスに映る自分の姿が、時々ふっと揺らぐ。
階段の踊り場では、掃除のおじいさんが黙々とホウキを動かしていた。
「おじいさん……こんにちは。」
「おや、君は…。他の生徒と何が違うよ
ようだね。」
おじいさんは笑った。
その笑顔は、どこか懐かしさを帯びている。
「ねえ、おじいさん。」
「うん?」
「この世界……もうすぐ終わるの?」
おじいさんはホウキを止め、空を見上げた。
窓の外では、空の亀裂が金色に光っていた。
「終わる、というよりは……戻るんじゃよ。元の形にな。」
「戻る?」
「そう。君たちがここにいられるのは、“止まっている時”があるからだ。
でも、それももう限界だろうね。」
未来は唇を噛んだ。
「じゃあ……どうすればいいの?」
おじいさんは優しく言った。
「選ぶんだ。進むか、止まるか。
ただ、それだけのことじゃ。」
「……私は進みたい。」
「そうかい。もう、決めたんじゃな?」
おじいさんの目尻が優しく下がった。
「なら、彼を連れておいで。きっと、まだ迷ってるじゃろう。」
未来は深く頷き、音楽室へ向かった。



