放課後。
窓の外では、灰色の雲がゆっくりと形を変えていた。
校庭の木々が、まるで時間を忘れたように静止している。
未来は教室の窓際に立っていた。
昨日と同じ景色。
でも、今日の空気は、どこか違っていた。
音が少ない。風もない。人の気配さえ希薄だった。
「……もう、世界の終わりが近いのかな。」
「聖くん…」
未来は呟く。
隣の席の茉希は、いつもの笑顔で話しかけてきた。
「ねえ未来、帰りにクレープ食べに行かない?」
「……ごめん、今日は」
「えー? また? 未来、最近ずっとつれないよー?」
その声に、未来は小さく笑った。
——この茉希は“偽物”だと知っていても。
声の響きが、本物の茉希と同じで、胸が痛くなる。
「……ありがとう、茉希。」
「え?」
「ううん、なんでもない。」
未来は立ち上がり、鞄を肩にかけた。



