途中で、聖が目を開けて言った。
「お前も、隣で弾けば?」
「私、そんなに上手くないよ。」
「いいから。」
未来は笑って、隣に座った。
白い鍵盤が二人の指先をつなぐ。
音が重なり、ほどけ、また重なっていく。
音楽室に、世界の外の風が吹き抜けた気がした。
最後の音が消えたとき、
未来は小さく呟いた。
「私……この世界を出たいと思ってる。」
聖は指を止めた。
「……。」
「ここにいたら、何も変わらない。
怖いけど、心が痛くても……ちゃんと、生きたい。」
聖はしばらく黙っていた。
やがて、苦しそうに目を閉じて言った。



