「……ここにいれば、楽だ。」
聖は呟いた。
「時間は進まない。誰も傷つかない。俺はもう、これでいいんだ。」
未来はゆっくり首を振った。
「でも、それって……本当に生きてるって言えるの?」
「お前には、わからない!」
聖が声をあらげた。
けど未来は怯まなかった、そして
未来の目は真剣だった。
「私もね、平凡でいることが幸せだって思ってた。
変わらない毎日が一番だって。
でも、ここに来てわかった。変わらないって、絶対にそんなことはあり得ないんだよ。私が欲しかった"平凡"は"、変わらないこと"じゃない。いつか、自分の大切な人達と、安心して、穏やかな生活を送ることだったの。
この世界に来て、それを気付かされた。私は思い違いをしていたんだって。大切なことを、この世界は、教えてくれたの!だから…、聖くん。今は辛いかもしれないけど、けどね…、きっと変わっていくから!私が聖くんに出会えたように、聖くんも私と出会って何かが変わっていくはずだからっ!まだ、全てを諦めないでほしい!私達には、これから、もっと、たくさんの可能性が広がってるはずだから!」
「ピアノだって辞めたっていいじゃん!聖くんが聖くんのままでいられるなら、私はそれでいいと思う!」
「いや、でも。辞めちゃったら、少し寂しかったりはするけど…。」
聖はしばらく黙っていた。
「はぁ……なんだそれ。結局どっちなんだよ。」
そして、苦笑する。
「お前ってさ、なんか変なやつだな。」
「え、…そうかな?」
二人は少しだけ笑った。
その笑いが、妙に温かかった。



