学校に着くと、教室のざわめきが耳に心地よく響く。
誰もが普通に笑っていて、昨日と同じように時間が流れていた。
だけど、どこかにひび割れがあるような気がしてならなかった。
「ねえ、茉希。やっぱり結城聖くん知らない?」
「…? 誰彼それ?転校生?」
「違うよ!天才ピアニストの結城聖くん——!」
その瞬間、茉希が首を傾げた。
「ゆうき……誰?」
「え? 結城聖だよ、本当に知らない? 世界的に有名な——」
「そんな人いたっけ?」
未来の喉がかすかに震えた。
周囲のクラスメイトも同じように、「誰?」「そんな名前初めて聞いた」と囁いている。
——この世界には、結城聖がやはり存在していないのだ。



