電車の向こう側。【完結】








未来の足が、勝手に前へ出た。

 心臓が早鐘を打つ。




 「行っちゃダメ」




 そう頭では思っているのに、足は止まらなかった。

 気づけば、ドアのすぐ目の前に立っていた。







 「……どうして」







 扉の奥から、あたたかい光が差し込む。

 それは、怖いほど優しい光だった。







 「——もう、平凡じゃいられないのかな。」




 未来は小さく息を吸い、電車に乗り込んだ。




 その瞬間、周囲の音がすべて消えた。
 時間が止まったようだった。







 座席に腰を下ろすと、ふわりと眠気が襲ってきた。



 「……眠い」





 視界がぼやける。
 電車の揺れが心地よく、まぶたが重くなった。