電車の向こう側。【完結】







『有名俳優、眠るように倒れる』

 『政治家、意識不明続出』

 『総理大臣、緊急事態宣言を発令』






 街のざわめきが不気味に響いていた。





 「……何が、起きてるの?」

 未来はつぶやく。
 人々が次々と倒れていく映像が、何度も繰り返されていた。
 そのたびに、胸の奥がざわざわと波打った。








 「未来!」

 後ろから茉希が駆け寄ってきた。

 「もう、ずっと探してたんだから!」

 「……茉希」

 「ニュース見た? 怖いね……。なんか、夢みたいで。」

 「うん……夢、みたいだよね。」







 二人は並んでスクリーンを見上げた。
 茉希が未来の顔をのぞきこむ。





 「ねえ、未来……大丈夫?」

 「わかんない。何もかも、ちょっとだけ違って見える。」

 「“ちょっとだけ”?」

 「うん……でも、その“ちょっと”が怖いんだ。」






 茉希は困ったように笑った。




 「未来って、ほんとに繊細だよね。
  でも、そんな未来が好きだけどね。」





 「……ありがとう。」




 未来も小さく笑った。




 けれど、心の奥では笑えなかった。
 茉希の瞳に、ほんの少しだけ“濁り”を感じたのだ。