電車の向こう側。【完結】

 



朝の光が、薄いカーテンを透けて部屋の中に広がる。

時計の針が、淡々と“平凡”というリズムを刻んでいた。





 橘 未来(タチバナ ミライ)は、ベッドの上で小さく伸びをした。





 鏡の前に立つと、黒髪のストレートが肩に落ちている。





 それを手ぐしで整え、いつものように——伊達メガネをかけた。






 この瞬間、彼女は
「平凡な高校生の橘未来」に変わる。







 本当はメガネがなくても、視界は驚くほどくっきりしている。




 けれど、何もかもがくっきり見える世界は、少し怖かった。





 “特別”なんて、まるで呪いのようだから。