呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

落葉樹の葉がほとんど落ちた頃。
いつものベンチでマリジェッダが質問してきたから返答する。

「学年末テスト? 赤点なんか無いわよ」
「それは良かった」
「私、赤点キャラなのね」

赤点があると補習授業が冬休みにまでも入り、レーノルザンには行けなくなるだろう。
マリジェッダはその心配をしていたらしい。

「じゃあ、後は学年末の舞踏会だけね」
「そうだな」

マリジェッダは、なんだか浮かない顔をしている。

「どうしたの? 何かあった?」
「秘密にしておいてほしい」
「何を?」
「もし呪いが解けても誰にも言うな」
「ええ、わかったけど」

何でだろうかとエルーナは思う。
マリジェッダは自国に聖女を連れて帰るのが使命なのかもしれない。そうでなければわざわざこんな小国に留学などしてこないだろう。

マリジェッダの曇った表情を晴らすため話題を変えようとするエルーナ。

「ねえ、魔女ってどんな人達なの?」

「基本的には普通の女性と変わらない。魔法で有益な薬を作れるから薬師になる人が多い」
「へぇ、そうなの。魔法って憧れるわね。便利そう」
「聖女も似たようなモノだろ」
「そう? 魔女ってどうやってなるのかしら?」
「詳しくは知らないが一般的には悪魔と契約するらしい」
「悪魔? 悪いことしないの?」
「悪魔って言うとイメージは悪そうだが悪いことはほとんどしない。但し契約するには対価を必要とする。女神みたいに見返りを求めないわけじゃない」
「対価?」

次から次に疑問が浮かんでくる。

「そこはあまり話したがらないな。魔女には秘密が多いからな」

「へぇ、面白いわね」

マリジェッダは無言で頷いた。

「そろそろダンスの練習するか」
「そうね」

マリジェッダは意外とおしゃべりだなと思うエルーナ。