呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

「それより学年末の舞踏会のことだが」
「え? 休むわよ」

現実に引き戻されたエルーナ。
エルーナは、学年末の舞踏会は仮病を使って休む気満々だ。

「いや、あれにも単位が関わってくるだろ」
「そうねぇ」
「俺と組むか?」
「全然練習してないのだけど」
「いい。出れば単位がもらえる緩い行事だぞ」

欠席者は一緒に踊る相手が見つからない、もしくはダンスが苦手な人が多い。

「うーん。そうねぇ……じゃあ、その日だけその眼鏡変えましょう」

そう言った後で良いことを閃いたという表情になるエルーナ。

「それだわ、それ!」
「一日だけだからな」

決してエルーナはダンスが苦手というわけではないが、今まで誰かに誘われたことがない。踊れるかわからない。
どうせ出るなら放課後に残り、マリジェッダと練習することになったのだが。

「お前、どうなんだコレ?」
「うーん。悪くないけどコレじゃないわね」

エルーナはマリジェッダの眼鏡選びに奔走していた。丸眼鏡を置いて次を選ぶ。

「私は縁なしが良いと思うのだけど」

マリジェッダはため息を吐く。

「眼鏡はしない」
「え?」
「本当は裸眼でも大丈夫なんだ」
「そうなの?」
「この国に来て驚いたが、隣国なのにレーノルザンは知名度が低いな」
「この国が田舎で、貴方のお国が大国過ぎるだけよ」
「そうか……」

やけに歯切れの悪いマリジェッダ。

「もしかしてこの瓶底眼鏡は変装のつもりだったの?」
「厄介事にはかかわりたくないからな」
「ふーん」

あの瓶底眼鏡をしなければ、よく見なくてもマリジェッダは良い男だ。

「女子に言い寄られても婚約者がいるで通せば良いのよ」
「そうだな。これからはそうする」

なぜか見つめてくるマリジェッダ。

「練習するか」

マリジェッダはエルーナに手を差し伸べた。エルーナはその手を取りベンチから立ち上がった。