呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

エルーナがハッとして意識を取り戻し、水溜まりで転んだ彼を見ると、牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけている。

「あらあら、あなたも大変ね」

エルーナは起こしてあげようと手を伸ばす。

「お前、エルーナ・イズンだな」

瓶底眼鏡の男子生徒はエルーナの手は取らなかった。

「私の事知ってるの?」
「有名だよ」

(元聖女候補とか言うのかしら?)

「ヘドロ女!! お前のせいで転んだじゃないか!」
「ヘ、ドロ、女」

世間のリアルな反応が身に染みた。それでもエルーナの心は回復した。

「そう言うヘドロまみれのあなたはヘドロ男かしら?」
「何?」
「お似合いよ」

エルーナは男子生徒に向けて右手をかざした。

「やめろ! やめろぉぉーー!」

エルーナは男子生徒をスライムまみれにしてやった。このスライムはエルーナ調べでは人体に害はない。
勝手に転んでおいて暴言吐くとは、お仕置きが必要だろう。これは決してイジメではない。


学園で人目が少ない道を選んで二人で歩いている。人通りが少ないとはいえ、すれ違う人の目線は痛く感じる。

「で? 何で水溜まりで転んだの?」
「うるさい」

プールの横を通りすぎた。

「ついてくるな」
「だってスライムまみれになって一人で歩くの恥ずかしいでしょ?」
「お前といるともっと恥ずかしいだろ」

「じゃあ寮生に風呂場借りなよ」と言ってエルーナは男子生徒を見捨てようとした。

「待て! どこへ行く?」
「私といると恥ずかしいんでしょ?」
「……責任は取れよ」

そっぽを向いて気まずそうに言う男子生徒。

「それじゃあ寮までね」
「それはそうだろ。男子寮だぞ」
「はいはい」

男子寮まで見送って別れた。