呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

◇ ◇ ◇

春休みに入ってカミラの所へ、マリジェッダとエルーナは訪ねに行った。
もちろん、婚約者として。

「見てくれスチュアート! エルーナのポーションのおかげで右手の痛みがだいぶ良くなったよ」

カミラが愉快そうに腕を回す。
マリジェッダはカミラの手を治したくて聖女の力が必要だったのかもしれない。
エルーナはそう思っている。

「魔神様はエルーナを祝福したつもりだったのかな」
「そうだったら良いですね」

薬を作るために大鍋をかき混ぜながらカミラが言う。
カミラの一言にエルーナは考え込んで、今の考えを口にする。

「今考えると縁を結んでくれた神様ですね」

エルーナの発言にマリジェッダは複雑な顔をした。

「死んでいたかもしれないのに、おかしな発想だな」

女神の加護と魔神の呪いが相殺されてエルーナは無事でいられる。

「スチュアートって夢がないよね」
「現実主義者なんだから」

たじろぐマリジェッダ。

「なんだ? 随分、仲が良いな」
「私達はスチュアートに関して意見が合うのよね」

「「ねー!」」

カミラとエルーナが声を合わせる。

「なんだそれ」

不思議がるマリジェッダ。
エルーナはマリジェッダを見つめながら幸せを噛みしめた。

正式に婚約し直すのは手続きに時間がかかるようだが、卒業まで一年ある。
エルーナは進路を隣国で普通の花嫁になることに決めた。