呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

カミラが製薬で忙しくなったので、お屋敷で夕食を食べることになる。

「明日は街に出るって言っていたわね」
「ちょうど近くの街で祭りがある」
「へぇ、何の祭り?」

白身魚のムニエルを食べながらエルーナが尋ねる。

「星を鑑賞する祭りだな」
「冬にもするのね」
「夏も良いけど冬のほうが空気は澄んでいるからな」

エルーナは頷く。

「じゃあ、厚着していかないとね」
「昼間は市場を観光する予定だから調節できる服装が良いだろうな」
「そうね。マリジェッダは星祭りに行ったことある?」
「昔、夏の星祭りは伯母さんと行ったな」

マジェッダはカミラと大分仲が良いらしい。

「マリジェッダってカミラさんと仲が良いわね」
「ああ、両親は仕事で忙しくてな。初等部と中等部の頃、夏休みはほぼ伯母さんの所にいたな」
「そうなのね」

マリジェッダは頷く。

「マリジェッダはどんな子供だったの?」
「よくカミラ伯母さんの飼っていたカラスに追いかけられていたな」
「え~、女子じゃなくてカラスに?」
「確か名前はベンダーっていうカラス……何だ女子に追いかけられるって?」
「小さい頃からおモテになられてそうと思って」

「……小さい頃はよく女の子に間違えられていたな」
「そうなの? 確かにそういう子いるわね」
「その辺の話はやめておこう」

マリジェッダがなぜか口ごもった。

「マリジェッダ、貴方まさか!」

エルーナは人差し指を向けた。

「女の子の恰好させられたでしょう!」

何のためらいもなく言い放つエルーナ、遠慮がない。
マリジェッダが苦い顔をしている。

「小さい頃なんだから気にしなくて良いのに」
「いや、本当にその頃出会わなくて良かった。お前なら率先して女の服を押しつけて来そうだ」

明らかにげんなりしているマリジェッダ。

「そうかも。可愛すぎて皆に自慢する」
「やめろ! 想像したら鳥肌が」

エルーナは笑顔になった。
マリジェッダもエルーナの笑顔につられてか微笑んでいる。
エルーナはこんな時間がずっと続けば良いと願った。