呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

昼食を食べ終えて湖の畔をマリジェッダと歩く。

「大丈夫か?」
「うーん。今はきっぱり諦めるのは難しいかも」
「ここまで来させて、すまなかったな」
「良いの。ちょっと勿体ないって思うくらいかな」

上を見ると葉の落ち切った枝と空だけが広がっている。

「勿体ないって?」
「そう。せっかく女神様の祝福を授かって、みんなから期待されていたのに……もう何にも出来ないんだなって」

マリジェッダは黙って聞いている。

「残念だなぁって思って」

エルーナの背中をぽんぽんするマリジェッダ。
エルーナは悲しいのに全然、泣けなかった。呪いの効果だろう。でもマリジェッダの前で泣かなくて良かったとも思う。

◇ ◇ ◇

午後はカミラの仕事を見学することになった。
製薬は面白そうな作業だが根気がいりそうだった。今回の薬は一滴一滴、じっくり抽出してくパターンらしく、見ていて眠くなった。

「あと三日あるから明日は街にでも出るか?」
「良いの?」
「うん。伯母さんは薬を作りはじめると集中して人の話を聞かなくなる。その間暇だろ?」
「そうね。邪魔しちゃ悪いものね」

二人で小屋を出る。別邸までの道を戻る。
用意された部屋で少し休むことになり、使用人に部屋まで案内された。
荷ほどきをして明日着る服を決めながら思う。

(ふふ、どれにしよ?)

呪いのことは悲しいのにマリジェッダと出かけるとなると楽しい気持ちになる。
姿鏡に映った自分を見て気づいた。

(私、マリジェッダのこと好きかも……)

出会いは微妙だったが何だかんだ優しいし、一緒にいて心が弾むのだ。

(そうね。きっとそう。でも……聖女じゃない私を必要としてくれるかしら?)

ただのエルーナのままだったら婚約続行だろうけど、聖女のエルーナにしか用がないのではなかろうかと考える。