呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

「ほいで? どんな呪いなんだい?」

しばらくしてカミラが聞いてきた。
エルーナは頷いた。

「それが神聖力を使おうとすると、スライムみたいなドロドロが出るのです」
「ほぉ、興味深いね。ちょっと待ってて」

カミラがまたカーテンの向こうに行く。物を取りに行ったようだ。銀の器を持ってきて床に置いた。

「ここにどーぞ」
「はい」

エルーナは両手を出していつものように力を込めた。
黒いモヤが立ち、黒い塊になるとその中から紫のスライムが生まれた。

「おおおっ、面白い!」

マリジェッダとカミラが笑うのを堪えている。

「何が面白いのかわかりません!」

人が呪いで困っているのに不謹慎だと思うエルーナ。

「おぅ、これは思ったよりすごいな」

カミラが何のためらいもなくスライムに人差し指を突っ込んだ。
スライムはドロドロの液状になっていく。

「こりゃあ、ポーションだな」
「え?」
「回復薬?」

人体に害はないが、そんな良いものだとは考えてなかった。
「普通ならいろんな材料を集めて精製するんだけど、直接的に出すのははじめて見た」
溶けたスライムをまじまじと見るカミラ。

「しかも、この色のポーションなんて見たことないね」
「微妙に甘いし、回復薬とは思わなかったな」

マリジェッダがなぜか味の感想を言う。エルーナにスライムまみれにされたとき口に入ったのだろう。

「そうなのか!」

カミラは人差し指を舐めて味を吟味している。

「良いね。これは面白い。魔女の薬は大体苦いからねぇ」
「え? そうなんですね」

カミラはうんうん頷いている。

「そうかぁ、聖女と魔女の間の子みたいなもんだね」

腕を組んで考えるカミラ。

「聖魔女って呼ぶべきか、こんなの見たことないね」
「呪いは解けるのでしょうか?」

エルーナは真剣に聞いた。
その直後、腹の虫も真に迫る勢いで鳴った。

「それは昼食を食べながら話そう」

マリジェッダは片手で口を押さえながら震えている。