呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

国を出るための書類を役所に出しに行ったら、すんなりと許可が下りた。普通なら聖女の登録で国から出ることはできないが、エルーナは国から完全に聖女ではない扱いになっているらしい。

早朝、マリジェッダと学園で待ち合わせする。
エルーナは制服ではなく、濃い色のコートとその下にワンピースを着て待っているがマリジェッダが約束の時間を過ぎても来ない。
時計台の前でソワソワする。
マリジェッダが荷物を運びながら走ってくる。また瓶底眼鏡をしている。

「寝坊でもしたの?」
「いや、すまない。ちょっと人に絡まれて」
「あー、なるほどね」

こんな朝っぱらから女子に見つかって絡まれたことが容易に想像できた。

「そんなことより早く行こう」
「うん」

歩き出す二人。
街に出るため馬車に乗った。

マリジェッダはいつの間にか眼鏡を外している。
エルーナがじっと見ているのに気がついたようだ。

「何だ?」
「ずいぶんおモテになられると思って」
「手のひら返しがすごいよな」
「人間ってそんなものでしょ」

エルーナは国から見捨てられてからそう思う。

「……そうだな」
「ねえ、マリジェッダ。私が聖女のままだったら話しかけてくれた?」
「目立つ行動は控えてたし、どうだろうな」
「じゃあ、呪われて良かったのかもね」
「何でそう思う?」
「マリジェッダと知り合って、今のほうが楽しいから」

エルーナは自然と笑みを浮かべる。

「……そうか」

返事をするマリジェッダの耳が赤くなっているのをエルーナは見逃さなかった。