呪われて謎のスライムしか出せなくなった聖女の進路先

自分で身支度していたから髪の毛のセットに時間がかかってしまった。
待ち合わせに遅れるエルーナ。
マリジェッダの後姿が見える。後姿でわかるくらいに親しくなったみたいだ。

「遅れてごめん」
「ああ、あと五分ある。大丈夫だ」
「マリジェッダ、私が遅れてくるのも想定済みなのね」
「そうだな」

マリジェッダはエルーナに肘を出した。
エルーナはそこに手を絡めた。

会場に入ると、一際ざわめきが起こる。たぶん、落ちぶれた元聖女と誰かは知らないが良い男っていう反応だろう。

「視線が痛いな」
「そうね」

二人は端のほうに移動した。
誰も近づいては来ないが、様子見だけされているのはわかった。

学長の長ったらしいあいさつの後、一曲目がはじまった。


最初エルーナがちょっと足を踏みかけたが、マリジェッダは避けてくれた。
エルーナが目の表情だけで褒めるとマリジェッダは微笑んだ。
エルーナは楽しくて仕方がない。こんな感情は久しぶりだった。

上手いとまではいかないが、そつなくこなせているだろう。
あっという間に一曲目が終わる。

マリジェッダから離れるエルーナ。
振り返ると女子が数名、マリジェッタに話しかけている。

(おやおや? どうするのマリジェッダ?)

「お誘いありがとうございます。ですが二曲目も婚約者と踊ります」

残念そうな女子を残してマリジェッダはこちらに歩いてくる。

「ほらね、逃げられたでしょう?」
「なかなか便利な口実だな」
「逃げ切れるかは問題だけどね」

新学期から大変だろうなと密かに思うエルーナ。
果実水を飲みながら考える。

明日から冬休みに入る。いよいよ呪いを解く方法を探るのだ。
前は一人で落ち込んでいる事が多かったが、今はマリジェッダと知り合って楽しいことが増えたように思える。レーノルザンに行くのもわくわくしかない。