雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

レストランを出ると雨上がりの川沿いを歩いたんだ。
かつて二人で腰を降ろし語り合った場所。
今の職業を決めた場所。

「十五年間もずっと帰らずに何をしてたの?」

「色々あったんだ。大学も忙しかったし、仕事は更に忙しかったし」

この町を捨てたとは言わなかった。
この町にお墓を立てて僕を埋めて、帰らないことにしたとは。
でも今、ここにいる。
それとは無関係のもっと古い場所に。

そう、これは古い思い出なんだ。
僕は人生の先端にいて、誰にも知られずに二人で歩いている。
どの時代の僕が想像できただろう?
この瞬間を。初恋の女の子と肩を並べて、僕の起点となる場所に居る事を。

「美沙岐はいつ帰ってきたの?」

「三年前。三十歳になる前に帰ってきたかったの。私にも色々あって。でも、手に職を持たない女に世間は厳しいわ」

意味なんてない。
意味なんてないんだ。
僕たちがここに居ることさえ。

「またね」と美沙岐は言った。
僕は手を振った。

うしろ姿は中学生から変わらないと思った。