雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

「そう。最初から持っていたもの。
育んできたもの。
大事にしていたもの。
そういうもの全部、置いてこないと生き残れない世界だった。
ここにあるのは作りこまれた偽物の私。
本当の私は別に居るのよ」

「個人的に撮ってもらった写真は無いんですか?」

「無いわ」と小夜子さんは言った。
そして無言で最後のページをめくった。
そこには一枚の写真が挟まっていた。

裏返しの写真を手に取った。
僕が写っていた。
僕と美沙岐が。
並んで何でもない顔をしていた。

上棟式の写真だ。
もちがまかれ大人たちは酒を酌み交わし、とりあえず弁当を食べ、並んで座っているときに誰かが撮ったんだろう。

「こういう写真の事を個人的な写真って言うんでしょうね。
あんまり変わってないからすぐにわかったわ」

「これ、どうしたんですか?」

「持ってきたのよ。ミサが。
隣に写ってる女の子は彼女の母親なのよ」
と小夜子さんは言った。

本当の自分。

真実は案外単純なんだと思った。