雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

小夜子さんはコーヒーミルにキリマンジャロを入れた。
注文を聞かれコーヒーと答えたら銘柄を聞かれ、お勧めをと返したらキリマンジャロを選んでくれたんだ。

僕はカウンターに座りその淹れたてのコーヒーを目の前にしている。  

「昨日、焙煎したばかりなの。色んなコーヒーがあるけど私はこれが一番好き。
ただ苦いだけのコーヒーじゃあ、ダメなのよね。
男と同じ。
奥行きが無いとね。
その先に隠されたものを探すのが好きなのかな。
少数派なんだけど」

僕はカップに口をつけて一口味わった。

「少数派。僕もそうかもしれません」

「わかる気がする。背中を見てそう思った」

「背中で?」

「男の背中ってね、生涯を物語るのよ。
生涯というと大げさかな。
今まで生きてきた証、みたいなもの。
ジュンはいつも何かを創ってて、それがなかなか認められず、少数派」

「それはひどいな。でも当たってはないけど外れてもないかな」

「そう?私の背中占い。割と当たるんだけどな」

「もう僕は何も創っていない。
システムに取り込まれている。
でも少数派であることは確かかな。
個性的と言って欲しいと思うことはあるけど。
でも何で僕の名前を知ってるんですか?」