雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

家に帰ると父が刺身を肴に日本酒を飲んでいた。
加奈子の家にあった銘柄と同じだ。
一緒に飲まないかと誘われたけど断った。

僕にはまだ考えるべき事があった。
美沙岐と坂本さんの事だ。
でも家では落ち着かない。

午後五時。
僕は車を走らせた。
海を見ようと思ったけど、信号で直進し駅を目指した。
コーヒーが飲みたくなったんだ。

蛍。
喫茶店の蛍。
僕は階段を登りドアを開けた。

「いらっしゃい」と女主人は言った。