雷の道「十五年ぶりの故郷で、初恋の彼女と再会した六日間」 ──記憶と現在が交差する、静かな再生の物語。

加奈子は天を仰いだ。
青空は青空のままだった。
とんびが弧を描いた。
汽笛が再び鳴って静かな風が吹いた。

「加奈子。
辛い思いをさせてしまってごめんな。
俺が突然一方的に押しかけて嫌な過去をほじくりかえしてしまった。
俺が悪い。
加奈子は悪くない。
だから嫌いになったりはしない」

加奈子は首をふった。
僕をじっと見つめた。
目が潤んでいた。
今にもこぼれそうだった。
結局僕は加奈子を傷つける為にここへ来たんだと思った。


「ジュン、俺なんて言うようになったのね。昔は僕だったのに」
と言って加奈子は笑った。

加奈子は笑顔が似合う。
昔からそうだった。
どんな時でも直ぐに泣いて直ぐ笑った。
僕たちはそうやってきたんだ。
まだ何者でもなかった小学生の頃。
俺が僕だった頃。

加奈子の長いまつ毛は真っすぐでいつまでも濡れていた。強
い風が吹いた。
テーブルの上のミネラルウォーターが倒れそうになった。
西の空に黒い雲が立ち込めていた。

そろそろここを引き上げた方が良さそうだ。
加奈子は玄関まで見送ってくれた。
きな犬が吠えた。

僕は振り返らなかった。