窓ガラスの中の加奈子はコップを持ったまま動かなかった。
目の前の川をじっとみていた。
僕もそんな加奈子の視線の先をずっと見ていた。
川に映る光は時折通る舟にかき消された。
三艘目の舟が通り過ぎるころ加奈子は僕を見た。
ガラスに映る加奈子より現実味が増したけど、それでもまだ現実味を欠いていた。
「誰に聞いたの?」
と加奈子は言った。
平坦な声だった。
僕を責めているようにも慰めているようにも聞こえた。
加奈子は僕から視線を離さなかった。
「知りたいんだ。本当の事を。何があったのかを」と僕は言った。
「知ってどうするの?」
「わからない」本当にわからなかった。
それを知ってどうする?
「ジュン。私ね、小学一年生からずっとジュンの事が好きだったのよ。初恋だった。六年生で卒業したけどね。でも、美沙岐もジュンの事が好きだったと思うの。私がジュンの事好きだって言ったらすごく困った顔して、でも応援するねって言ってくれたの。私達、似てるのよね。好きになる人が。それでね、高校の時もそうだったの。同じ人を好きになった。その時はね、美沙岐から先に言われちゃったんだ。坂本さんが好きだって。社会人だったけどね、コンビニで私達バイトしてて、お客さんだったのよ。それからしばらくして二人は付き合い始めたの。高校二年生だった。三年生になって直ぐね、美沙岐の様子がおかしくなって、学校もバイトも休みがちになって、妊娠してる事がわかったの。クラス中に知れ渡ってね、美沙岐は学校から居なくなった。携帯もメールも繋がらなくなって、家にも帰ってなくて。ずっと連絡を取り続けたけどね。高校の卒業式が終わって半年くらい経って美沙岐は一人で帰ってきたの。でもね、何処で何をしてたのか、教えてくれなかった。お腹の子供がどうなったのかもね。一年という期間は、そういう期間かなとも思ったけど、美沙岐は言いたがらなかったからそれ以上聞いてないの。美沙岐は抱えてるのよ。抱えながら生きているの。色んなもの全部」
加奈子は僕から視線を外し目の前の川をしばらく見つめ、小さな吐息のあとコップに口をつけ今度はゆっくりと酒を飲み、また小さな吐息をついた。
目の前の川をじっとみていた。
僕もそんな加奈子の視線の先をずっと見ていた。
川に映る光は時折通る舟にかき消された。
三艘目の舟が通り過ぎるころ加奈子は僕を見た。
ガラスに映る加奈子より現実味が増したけど、それでもまだ現実味を欠いていた。
「誰に聞いたの?」
と加奈子は言った。
平坦な声だった。
僕を責めているようにも慰めているようにも聞こえた。
加奈子は僕から視線を離さなかった。
「知りたいんだ。本当の事を。何があったのかを」と僕は言った。
「知ってどうするの?」
「わからない」本当にわからなかった。
それを知ってどうする?
「ジュン。私ね、小学一年生からずっとジュンの事が好きだったのよ。初恋だった。六年生で卒業したけどね。でも、美沙岐もジュンの事が好きだったと思うの。私がジュンの事好きだって言ったらすごく困った顔して、でも応援するねって言ってくれたの。私達、似てるのよね。好きになる人が。それでね、高校の時もそうだったの。同じ人を好きになった。その時はね、美沙岐から先に言われちゃったんだ。坂本さんが好きだって。社会人だったけどね、コンビニで私達バイトしてて、お客さんだったのよ。それからしばらくして二人は付き合い始めたの。高校二年生だった。三年生になって直ぐね、美沙岐の様子がおかしくなって、学校もバイトも休みがちになって、妊娠してる事がわかったの。クラス中に知れ渡ってね、美沙岐は学校から居なくなった。携帯もメールも繋がらなくなって、家にも帰ってなくて。ずっと連絡を取り続けたけどね。高校の卒業式が終わって半年くらい経って美沙岐は一人で帰ってきたの。でもね、何処で何をしてたのか、教えてくれなかった。お腹の子供がどうなったのかもね。一年という期間は、そういう期間かなとも思ったけど、美沙岐は言いたがらなかったからそれ以上聞いてないの。美沙岐は抱えてるのよ。抱えながら生きているの。色んなもの全部」
加奈子は僕から視線を外し目の前の川をしばらく見つめ、小さな吐息のあとコップに口をつけ今度はゆっくりと酒を飲み、また小さな吐息をついた。

